イノベーター列伝1巻アビガン(2)
難敵アシクロビルの呪い、ランダムスクリーニングに活路
何を試しても英国の天才化学者、英SmithKline Beecham社のGertrude Belle Elion氏が創製したアシクロビルを上回ることができない。1997年、袋小路に入った研究を打破するために、当時ウイルスチームを率いていた富山化学工業(買収によって現在は富士フイルム富山化学)薬理研究部の古田要介副部長が、ランダムスクリーニングに打って出たのです。今まで抗ウイルス活性が既報であった既知の母核の誘導体合成研究という富山化学の常識から飛び出したのです。当時の我が国の製薬企業の研究開発は悪口を言えば“物まね”でした。先行した外資系製薬企業が上市した新薬の分子構造を変えた誘導体によって、投薬間隔を延長したり、副作用を低減したりしたベター・イン・クラスの開発が中心でした。その慣習を破り当社初のランダムスクリーニングに挑戦しました。成功確率が低いことは、当然覚悟の上、吉田福部長は腹をくくったのです。
しかし何事にも、助走があります。ランダムスクリーニングをやると決める根拠となる先駆的な研究がありました。94年に研究所長に就任した、当時の富山化学富山事業所の成田弘和事業所長が整備を進めていた自社化合物ライブラリーの整備がそれです。当時はハイスループットスクリーニング(HTS)技術もなく、すべて手作業。しかし、幸運の女神は富山化学に微笑んだのです。スクリーニングを始めて、1年半でリード化合物T1105を選抜することができたのです。アビガン創製への道を開いたのです。
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宮田総研の合弁会社、㈱ヘルスケアイノベーション(HCI)が創成したHCI1号ファンドには第一三共、大日本住友製薬、兼松が出資、年末までに最終出資締め切りを行います。同ファンドが投資を決定した企業は現在ありませんが、逐次報告します。こうした企業群に関する執筆内容には利益相反が存在することをご承知願います。
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