今朝ほど、京都大学本庶名誉教授、経団連の十倉会長、バイオインダストリー協会の中山理事長の新春鼎談の司会を終えたところです。読者の中にはライブでご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。多士済々の議論はとても面白くためになりましたが、十倉会長から「バイオはゴレンジャー」という発言には思わず吹き出してしまいました。レッドバイオ(医薬)、ホワイトバイオ(化学・エネルギー)、ブルーバイオ(海洋)、グレーバイオ(環境)、グリーンバイオ(農業)と確かにバイオテクノロジーの応用は急拡大していました。10年前のホワイトバイオ・ブームは原油価格の下落によって鎮静化してしまいましたが、21世紀の今は国民の考えたたが変わり、持続可能性や環境保全に大きな価値を置くようになりました。加えて、ゲノム解析やゲノム編集技術、そして情報処理・AI技術の浸透によって、合成生物学も現実の工業生産に投入されるようになったのです。今や原油価格に左右されないゴレンジャー・バイオが成立できる条件が整ったと考えるべきなのです。レッドバイオの事業化に偏った我が国のバイオも2022年をきっかけに、欧米のようにバランスのよいバイオの発展の形に変わっていくと確信しました。「全産業にバイオを!」。今年の良きスローガンです。
さて、新春企画の第二弾をお届けします。頭をかきむしってこの1年のバイオの発展を振り返り、2022年のバイオを展望しようと願っています。今年は以下のバイオ新潮流22を指摘したいと思います。項目数が多いので、前号から3号に渡って解説いたします。どうぞお付き合い願います。

2022年バイオの新潮流22
●新型コロナが変えたバイオ研究開発
→新Mmの憂鬱、これを知らなきゃ明日はない、バイオの最新潮流2022(1)
https://miyata-bio.net/column/0000121/
●ADHELM騒動とその後
●新たな創薬資源、集団ゲノム解析から新薬誕生
●PPIの実用化が一段と進む、KRAS阻害剤発売
●薬剤耐性の輪廻から離脱か?アロステリック阻害剤誕生
●中分子医薬の曙
●ADC(抗体薬剤複合体)の実用化ラッシュ
●次世代抗体の進化
●AAV遺伝子治療の停滞とそれを打破する試み
●たった一人の患者のための創薬始まる
→今号はここまでを論じます。
●DTxの離陸とDXの製薬業への浸透
●モダリティや創薬標的としてmRNAに脚光
●次世代の癌免疫療法の勃興
●固形癌細胞療法に技術突破と血液癌で次世代のCAR-T細胞出現
●他家再生医療の実用化
●肥満治療薬の開花
●AI創薬に雪崩を打って参入
●in vivoゲノム編集治療でPOC
●富士フイルムの創薬事業からの撤退
●バイオベンチャー上場ブーム
●生命現象の場としての液液相分離に注目
●大学ファンド10兆円だけはない。生命科学研究費源の多様化が始まる
→2022年1月17日号に掲載予定

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皆さん、お元気ですか?
米Google社の親会社(米Alphabet社)の子会社である英DeepMind社とその関連研究者が次々と蛋白質の立体構造のAI(人工知能)予測の応用範囲を拡大しています。AlfaGOで、碁の天才を打ち負かした同社が開発したAlphaFoldが高精度の蛋白質構造をDNA配列やアミノ酸から予測可能にしたことで、世界をあっと言わせましたが、今回は蛋白質複合体の立体構造予測や蛋白質・蛋白質相互作用(PPI)の予測まで踏み込んできました。今や、標的蛋白質の構造に基づいた創薬にはAIの助けなしには進まぬ状況になりつつあります。またこのAI技術を基にGoogle社は創薬開発の企業を今月創設しました。まだ、AIに関しては未消化のことも多く、雑駁な解説になってしまいますが、今後とも急速にAI化が進む新薬開発の今を何とか皆さんにお伝えしたいと思います。

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皆さん、お元気ですか?
まずはお知らせです。恥ずかしながら今年は私がYouTubeデビューした年でした。11月15日月曜日15時から16時、再生医療の天才、東京医科歯科大学 統合研究機構臓器発生・創生ユニット 教授、横浜市立大学特別教授の武部貴則氏の講演と討議をライブ配信(無料)いたします。下記よりどうぞご登録願います(締め切り11月12日12時)。もう武部先生は第三世代の再生医療を考えていました!
https://www.jba.or.jp/jba/seminar/se_02/_life.php

先週日経FT感染症会議の終幕直後にスイスNonvartis社が世界初の第三世代の分子標的薬(アロステリック阻害剤)「Scemblix」(asciminib)の製造販売承認を米国食品医薬品局から獲得したというニュースが入ってきました。2001年に発売された同社の「Gleevec、グリベック」(imatinib mesylate)から始まった低分子チロシンキナーゼ阻害剤は、厳しい副作用に悩まされた抗がん化学療法を過去のものとして葬り、副作用の軽い抗がん剤、分子標的薬の時代を拓きました。現在ではもう数えることも困難ですが、全世界で150種以上の分子標的薬が実用化していると推定しています。しかし、我が世の春を謳歌した分子標的薬にもアキレス腱がありました。それががんの薬剤耐性獲得とオフターゲットを阻害するために生じる副作用です。少なくともScemblixは薬剤耐性がん出現を理論的に抑制できる可能性があり、製薬会社ががんの薬剤耐性変異獲得と治療薬の変更、更には新薬開発とのいたちごっこをもう続ける必要がなくなるかも知れません。やっと持続可能な抗がん剤治療が見えてきたのです。これこそ流行りのSDGsですね。

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